救世の巫女、その後

本作はフィクションです。
登場する人物・団体・名称などは架空のもので、実在のものとは関係ありません。
作中の描写は物語上の演出であり、特定の行為を推奨する意図はありません。


巫女の肉体を失った朱里は、地下牢に閉じ込められていた。
日の光も差し込まない、冷たい洞窟の一室。湿った岩肌に背を預け、ただ孤独に耐える日々が続いていた。
何度も自分の行いを悔いた。叫んでも声は虚しく壁に跳ね返るばかりで、涙が枯れるまで泣いても、救いは訪れなかった。

それでも――皮肉なことに、男の身体は欲情を忘れなかった。
すべてを失い、醜い姿だけが残ったと絶望した朱里にとって、それだけが唯一の慰めだった。

「はぁ……はぁ……」

かつて白く細く、美しかった手は、もうどこにもなかった。
いま朱里の視界にあるのは、節くれ立った男の手だけだ。
その手で、ガチガチに硬直した肉棒を擦り上げる。
皮肉にも、本来の肉体を失うきっかけとなったそれが、朱里に孤独を忘れさせる。

「う……はあ……っ、いく……っ」

ドピュッビュルッ――。
朱里は荒い息を漏らしながら、粘り気のある大量の白濁液を狭い牢に撒き散らす。
躊躇や羞恥は、もはや存在しなかった。
それを当たり前のように繰り返す姿に、かつて救世の巫女と呼ばれた面影は、もう欠片も残っていなかった。

「く……はぁ……はぁ……」

荒い息だけが、しばらく洞窟の中に残っていた。
吐き出した白濁も、湿った空気の中でたちまち冷えていく。

ぼんやりしていると、洞窟に足音が響いた。
誰かの接近を感じた朱里は、身を強張らせる。

「……出なさい」
鬼継ノ民の女が、無表情のまま告げる。
朱里は答えない。ただ命じられるまま、重い身体を引きずるように立ち上がった。


朱里が連れて行かれた先には、寧鬼をはじめとした鬼継ノ民の女たちが、静かに佇んでいた。
その表情はさまざまだ。唇の端を吊り上げる者、強張った面持ちで朱里を見つめる者。
だが、その誰の瞳にも、揺るがぬ決意だけが宿っていた。

「ここは……? 私に何をさせようというの?」

野太い男の声で問いながら、朱里の胸には言いようのないざわめきが広がっていく。

「あなたには、私たちの未来を作ってもらいます」

「……未来?」

寧鬼は感情を交えぬ声で告げた。
鬼継ノ民は、かつて人間たちの迫害を受けた。その争いの中で、強力な異能を持つ者たちは次々に数を減らしていった。
そして彼女たちは知っていた。強い異能を持つ者は、強い魂を持つ者から生まれるのだと。

「その肉体がどれほど醜い男のものであろうと、関係ありません。
 あなたは救世の巫女に選ばれた魂の持ち主。
 その魂を継ぐ子が生まれれば、きっとより強い異能者となるでしょう」

寧鬼の言葉に、朱里の背筋が凍った。
自分から生まれた命が、また誰かを傷つけるかもしれない。
かつて共に戦った仲間たちの命を奪うかもしれない。

そんな未来を思ったとき、真っ先に胸に浮かんだのは、想い人の顔だった。

(海さん……)

朱里を常に守ってくれていた男性。
醜くなってしまったこの身体では、もう触れることも、言葉を交わすこともできない。
けれど、それでも――彼への想いだけは、まだ消えていなかった。

シュルッ――パサリ。
朱里が海への想いを募らせていると、不意に衣ずれの音が耳に届いた。
顔を上げると、寧鬼が一糸まとわぬ姿で立っていた。

「な……にを……?!」

雪のように白い美しい肌。豊かな曲線は、嫌でもその女らしさを意識させた。
その妖艶さに、朱里は目を逸らせなかった。
視線を外したいのに、肉棒が熱を帯びていく。

「そういえば……あなたと肌を重ねるのは、これで二度目ですね」

「……え?」

寧鬼の身体が、ゆっくりと形を変えていく。
輪郭と髪型が変化し、見覚えのある面差しが浮かび上がった瞬間、朱里の息が止まった。
そこに立っていたのは、かつて朱里がまだ“女”だったころ、一夜を共にしたあの女だった。

「あ……あなたが、あの時の……」

「ええ。思い出しましたか」

浴場の記憶が、脳裏にあふれ出す。
唇の熱。絡め取られるような吐息。柔らかな肌の感触。
そして、彼女の蜜壺に挿入した感覚――
忘れたはずの快感が、理性を内側からゆっくりと溶かしていく。

「さあ、始めましょう」

寧鬼は、あの夜の姿のまま手を差し伸べた。
振り払うべきだとわかっているのに、朱里の身体は動かなかった。
理性と羞恥の隙間を縫うように、その腕が朱里を抱き寄せる。


「あぁ、す、凄いっ!?」

「く……はぁ!!」

パンッパンッ――。
朱里は鬼継ノ民の女の一人を床に組み伏せ、その怒張した肉棒を突き入れていた。
だらしなく、よだれを垂らし、たるんだ腹を激しく揺らす。
周囲にそんな姿を見られても、もはや何も感じなかった。
久しぶりに触れる女の柔らかさに、朱里はたちまち理性を溶かされた。

「はっ……はあ……出るっ!」

「あ……あああ……っ」」

ドピュッビュルッ――。
最後にその巨体をさらに女の奥へ突き込む。白濁が蜜壺の奥へと溢れ出す。
何度目かも分からないほど、朱里は果てていた。

やってはいけないことだと、頭では理解していた。
この行為が、かつての仲間たちを苦しめる未来へと繋がっている。
それでも、数か月ぶりに牢から出され、欲望を許された男の肉体は、止まる術を知らなかった。

朱里は抜かずに、そのまま腰を振り出す。
肉棒は久しぶりの女の感触に歓喜しているかのように、硬さを失わなかった。

「ふふ……本当に巫女様の腰使いは男らしいですね。
 もしかして、もう心まで男になってしまったのでは?」

寧鬼の言葉が、朱里の胸に冷たく沈む。

「やめて……そんなこと、言わないで……」

否定した。けれど、その声には力がなかった。
腰はなおも女を求めるように激しく動き、自らの精を放とうとしている。

(わたし……もう、自分が分からない……)
(海さんやみんなのことは、今も……今でも、大切なのに……)
(なのに、女の人を組み敷いて抱く、この快楽が……気持ちよくて……)

「いっそ、男として生きてみた方が楽なのでは?」

その言葉に、朱里は息をのむ。
巫女だった自分を思い出して苦しまなくていい。失った身体を惜しまなくていい。
いまの肉体のまま欲望に従ってしまえば、それで済む。
そんなふうに思ってしまった自分に気づいてしまった。

(やめて……それ以上……)

抱いていた女までもが、寧鬼に誘われるように甘く囁く。

「あっ、あんっ……ねえ、寧鬼様もそう仰ってるし。
 もっと男らしく抱いて。元巫女様」

(やめ……て……)

「毎日、牢で自慰に勤しんでいるようですし、もう本当は男になっているのかもしれませんね」

先ほど牢に迎えに来た女までもが、煽るように朱里へ言葉を重ねる。

(本当に……やめて……それ以上、言わないで……)
(そんなことを言われたら……私、もう……)

それでも、朱里の腰は止まらない。
腰を振るたび、熱を持った肉棒はますます昂ぶっていく。
腕に力がこもり、組み敷いた身体を抱き寄せる手つきまで、知らぬ間に強くなっていた。
精神が揺らぐ。
巫女だった自分と、いま女を抱いているこの身体が、内側で噛み合わなくなっていく。

そして――

「うおおおおおおッ!!」

耳を劈くような叫びが、洞窟の空気ごと激しく震わせた。
あまりの迫力に、周囲は反射的に息を止める。
それが誰の口から放たれたものか、一瞬わからなかった。
あまりにも荒々しく、猛々しく、まるで本物の男が叫んだかのようだった。

「えっ……?」

抱かれていた鬼継ノ民の女が目を見開く。
その様子を見つめながら、寧鬼は静かに笑みを深めた。


その声は、朱里のもののはずなのに――朱里にはまったく聞き覚えのない響きだった。
低く、重く、相手を押し伏せるような、男そのものの声。

「ああっ……はあぁん!!」

ズンズン――。
朱里の動きが大きく荒くなる。
一方的に蹂躙するような動きに女から先ほどまでの余裕の表情が消える。

「もっと気持ちよくしてやる!おらっ!!」
(やだ……こんなこと言いたくないのに……なんで……)

「ああんっ……やああ!!」

腰の動きを止めぬまま、朱里は女の双丘を乱暴に揉みしだく。
女の甘い反応に煽られるたび、身体の奥から込み上げる衝動が強くなっていく。

「なんだ?……締めてきたな」
(どう……したの……? 私、何言ってるの……?)

朱里の中で、何かがじわじわと剥がれていく。
思考が霞み、朱里であった感覚が少しずつ遠ざかっていく。
このままでは戻れなくなる――そんな恐怖が朱里の心に溢れだす。

「こうされるのがいいんだな……」
(ダメ……でも……気持ちよくて……こんなの、やめたいのに……)

声が、口調が、“男”のそれに馴染んでいく。
抱き寄せる力の強さすら、もうためらいなくなっていた。

「出すぞ……全部っ……!」
(あぁ……もう、止まらない……)

腰が最後に深々と沈み込むと、熱い白濁が脈打つように流れ出す。
男の声を漏らし、相手を抱く快楽に溺れるたび、“朱里”の境界がゆっくりと溶かされていくようだった。


「はあっ……はあっ……」

荒い息をつきながら、朱里はその場に立っていた。
かつてどこかに残っていた女らしい仕草も、か細い表情も、今はもう見当たらない。
そこにいるのは、紛れもなく一人の男だった。

「巫女様、どうですか? 生まれ変わった気分は?」

寧鬼は唇に笑みを浮かべたまま、朱里に問う。
その眼差しは、すでに答えを知っている者のものだった。

「ああ。思ったより悪くないな。
 むしろ、頭がすっきりしている」

低く落ち着いた男の声が、何のためらいもなく返る。
その響きに、もはや戸惑いはなかった。
かつて“救世の巫女”として生きた少女の面影は、そこには一片たりとも残っていない。

「そうですか……それでは、もう一度私とどうですか?」

寧鬼は艶めかしく脚を開き、朱里を誘う。
その誘いに、朱里は即座に応えた。

「……ああ。ちょうどお前を、もう一度抱きたかった」

寧鬼を見下ろしながら、朱里はその上に覆いかぶさる。
もう、その動きに迷いはない。
求めるままに女を抱き、欲望をぶつけるその姿は、もはや一匹の雄そのものだった。

その光景を見守る鬼継ノ民の女たちの唇に、満足げな微笑が広がる。
彼女たちは理解した。

救世の巫女――神埜朱里は、もうどこにもいない。
祈りを捧げる巫女でも、守られる女でもない。
ただ己の欲望と本能に従い、彼女たちの未来を繋ぐためだけに在る、雄となったのだ。

やがて、寧鬼の甘い声が洞窟の奥へと溶けていく。
それに重なるように、周囲の女たちからも熱を帯びた嬌声がこぼれた。
そして、そのすべてを押し潰すように、朱里の喉から低く獣じみた唸りが響いていった。

fin



この小説は『異世界に召喚された巫女~使命を果たせず快楽に堕ちて~』のアフターストーリーです。
本編はFANZAおよびDLSITEで販売しています。